シャネルと不動産男

エッセイ

不動産業界の男は細やかな気遣いもできるが、その裏にある目標達成のためには手段を選ばない自己中心的発想があると思う。(everyday偏見)

ある日の合コンで出会った不動産男。その当時28歳とかの年齢で祖父母の一軒家をもらってそこに住んでいた。その男はとても優しくて、いろんな人脈で合コンを開いてくれる名幹事だった。

合コンの2次会でそいつの家にみんなで行くことになって、音楽をかけながらおばあちゃんちみたいなダイニングテーブルで缶ビールを飲んでいた。

そこにいた男たちも女たちも、結局はみんな優秀なサラリーマンだったので、善良な若者だった。喋る話題も特に色気もなく、つまらなかった。でも、その中に一人だけ悪女が混ざっていて、秩序が乱れた事件があって、それはとてもおもしろかった。

朝方になってとうとうやることがなくなった私たちは、家の中を探検して女の影を探そうという遊びを始めた。(やることが善良な若者代表)

いとも簡単に見つかった。

洗面所の鏡の部分の大きめの棚の扉を開けたら、ポツンと小さなシャネルのショッパーにヘアブラシとメイク落としが入っていた。(どれくらい小さいかって、シャネルでリップだけ買った時とかに入れてもらうレベルの小ささ)

見つかってしまった男は、「違う!お母さんの。」と恥ずかしそうに言った。

確かに、本当にお母さんの私物かと思うくらい丁寧に、小さな袋の中には彼女の存在アピールがあった。きっと、大和撫子のような控えめな彼女なのだろうなと思った。畏怖の念を抱いた。

と同時に、「お母さん」ってアンタ。男はどこまでもマザコンなのね、と思って妙に納得してしまった。そんなくだらない言い訳しかできない男にしっかりした彼女。

割と大きめの棚なのに、そのシャネルの小さな小さなショッパーしか入っていなくて、その棚がまるでその二人の関係性を表しているかのようで。

大きな愛で包んでいる彼の中にいる小さな彼女。

でも、本当は逆なのかもね。ってくだらないことを思いながら早く帰りたいと思っていた20代のわたし。懐かしい。

この話を書いていて思い出したのだが、男の家に行って女のメイク落としやカラコンなどがあった場合、皆さんはどうするのだろうか?

男を問い詰める?

見て見ぬふりをする?

しおらしく泣く?

不自然に捨てる?

・・・。

「家行ったらメイク落としあったから、中身結構あったけど全部流して捨てといたよ」っていう強者がいて、感心したことを覚えている。

そんな男相手にしちゃいけないよ。

話を戻すと、先ほどの不動産の男の子は、まだ「おじ」とか「港区女子」という言葉が流行る前から、そのような活動の斡旋をしていたと思う。今思えばすごい。

ある夜、紹介してくれたのは某コンサル出身の不動産経営おじ。お家柄もよく、自称優秀、豪邸に住んで週末はパーティをしているという。

「自分の遺伝子を広くたくさん残したいと思っている。自分は優秀だから遺伝子を残すのが社会のため。よくキャリアウーマンの友達に、結婚しなくていいので遺伝子だけ欲しいとよく言われるので何人かに提供した。それってさぁ、すごい賢い選択だと思うんだよね。」と。大真面目な顔で言っていた。

その場にいた女性陣はドン引きして、いそいそと次の飲み会に向かった。

後日聞いたら、一人だけその後デートに行って、経営者おじからシャネルのネックレスをもらったとのこと。すごーい!と目をキラキラさせる女子を尻目に、「おじさん趣味で可愛くない。」と、当たり前のように売っていた。そう、その子は今でいう港区女子のはしりだったのですね。

ありがたいことに、狂った婚活の日々の中でいろんな人の考え方や価値観に触れることができた。

なかなか自分も変わった価値観だと思うし、多様な価値観は大歓迎、否定するつもりも全くない。

ただただ、おもしろいなぁーと思って、多様性を感じている。

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